【あらすじ】
「いざっていう時、役に立たないなんて、いいんですかぁ?」
駐機場に並ぶMT-4ジェット練習機に向けてアイドルが放った一言は、巷のマニアだけでなく、防衛省や政治家の間でも話題を呼んだ。200機以上が量産され、25年にわたって使われてきたMT-4がいまさら予備戦力になり得るのか?
　万一の有事に備えて自衛隊機は武装できるべき……と考える技術研究本部の技官・若林は、MT-4を設計・製造した基山製作所に武装化の検討を打診し、エンジン推力向上のため岩見沢原動機に接触。両者の協力を得て「研究試作構想」を提案したが、同本部の技術開発官はこれを却下。判断に裏があることを知った若林は、秘かに調査に乗り出した……。

　書き下ろしの「あとがき」では、航空自衛隊で使用されている実際の川崎T-4練習機について、元・航空機設計者である著者が、そのポテンシャルと武装化改修の可能性について技術的な観点から論じています。「ブルーインパルスの使用機」や「戦闘機に乗る前の練習機」として知られるT-4の、別の一面を知ることができる内容です。