あらすじ:
矢越和也は横浜市内の住宅地の一角で小料理店を営んでいる。海軍の軍人であった祖父から受け継いだ軍艦内の料理をアレンジして出しているその店は、半ば趣味で経営しているものであった。メイド服を着た二人の従業員のもてなしも常連客に喜ばれている。時にはそうした常連客同士での会話も繰り広げられたりしているが、そのような中で彼らの生きてきた「歴史」が思わぬきっかけで結びついていくことになる。

みどころ:
メイド、戦史、台湾といった、高津本陣主宰の好みの分野を有機的に結びつけたストーリーが展開されます。
高齢の男性、キャリアウーマンといった他のメイド小説ではあまり出てこないタイプのキャラクターや彼らの語る内面などが味わい深いところです。「麗しの双峰」と同様、分量は少なめですが、テンポよく物語は展開していきます。若干、奇をてらった意外な真相も。
有馬桓次郎氏の海軍料理レシピ本からの知見を多数得た料理に関する描写も見過ごせません。

A6(文庫サイズ)176ページ